どっちもどっち

1.
この顔とこの身体とこの性別に産まれた私を幸せと呼べない私が嫌い。手にしたはずの日常は嘘でしたと手を振って簡単に私から遠ざかっていく。まだ会うだけでこんなにも涙が出るほど好きだなんて私が狂っているらしい。どの道を選んだって私が私を好きになる日なんて来ないのなら、せめて誰かに愛されたい。私と同じぐらい狂っているなら2人できっとめちゃくちゃになって、それでも幸せと私は笑っていたかもしれない。失くしたものは大きすぎて何を詰め込んでも足りない。怖がりな私は目の前で糸を切る。ほつれたままの肩をまだ大事に持っていて、今日もきっと眠れない。眠れない。目が覚める瞬間が嫌い。
2.
一緒に歳をとる恐怖を共有できるのだろうか。
わからなくなる頭を抱えてお互いに見えている中、生活はつづく。
抱きしめて大丈夫だよって言ってくれる優しさを求めない年齢には、いつまで待てばいい。
早く大丈夫になりたい。
どうせ分かり合えないと口を噤む弱い私に気づいていない楽天的な思考で、不幸だと言えるなんて幸せなくせに。
何かを求めて私に向かう視線が苦しい。
息ができないほどに黒い沼で浮かんでいることに今さら気づいて、見ている世界は空よりも遠い。
黒い沼を飲み込みながら私を抱きしめてくれた時間だけ幸せだったなんて滑稽だ。
陸に戻りなよ。
くたばった優しさは大丈夫と手を繋いで私を安心させる。
憎い。

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