こんな朝を迎えたかった。
早く目が覚めた日はふたりで土手を散歩して、食パンを買って帰る。パンが焼ける間にコーヒーを淹れる。
こんがりと甘い小麦の香りと、爽やかな朝に似合うコーヒーの香り。ふたり順番に鏡の前に立って、それぞれの場所に向かう。また、ここに帰ってくるために。
「いってきます」は「ただいま」のために。
私がバタバタと洗濯物を干す。あなたはまだベッドで眩しそうに布団を被る。ひとり分のコーヒーをマイボトルに流し込んだら、丸くなった布団の中に「いってきます」と声をかける。聞き飽きた「ごめんね」がいつものように返ってきた。私はここにいられない。
よく晴れた。東からの太陽に少し気分をはずませて、私の場所へ向かう。
「さようなら」
鬱屈とした私たちは、手を繋いで晴れた空を見上げようとした。
わからなくて抱きしめ合う夜にあなたは満足して、朝の空を忘れた。悪いのは、こんなに晴れた今日だろう。
嫌だと言わないあなたの、きっと最後の腕の中。出会った日と何も変わらなかった。
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