ドライフラワー

彼女はドライフラワーが好きだった。
おしゃれなものは、スワッグとかいうらしい。
家にはいつも花があって、花びらが散るのをひどく嫌った。

会う時はいつも綺麗だった。
明るめに染めた長い髪は、クルクルと背中までいつもふわりと揺れていた。
おしゃれなカフェも小汚い居酒屋も行ったけれど、
キラキラと笑う彼女はどこに行っても変わらなかった。
結婚するんだって待ちきれずにラインで送ってきた可愛さに、幸せを願った。

式も披露宴もこだわりがたくさん詰まっていて、
手作りのウェルカムボードも感謝の手紙も、隣に座る同級生たちと涙が出るぐらい褒めちぎった。
やっぱりキラキラと笑っていて、太陽の下で風に揺れる咲いたばかりの花みたいだな、と思った。

次に彼女に会ったのは、やっぱり涙で目を腫らしたお母さんや親戚たちと、
あの日一緒に褒めちぎった同級生と、真っ黒い服を着て。
キラキラだけがそこにはなかった。

嘘みたいなモクモクが、みんなの目に映っていた。

咲いてしまった彼女は、花びらが散る毎日を想像してしまったのだろうか。
実を作って種になり、また咲き誇るまで巡る美しさに怖くなってしまったのだろうか。
自ら生命を、止めてしまった彼女は、あのキラキラでさえも悲しくしてしまっていた。

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