男女の友情（戯曲）

　　男と女が会話している。和やかな雰囲気。

男　俺らは同意あったよね？
女　うん？
男　聞くまでもないか。
女　なんで？
男　なんで？
女　わかんないじゃん。
男　嫌だった？
女　嫌じゃないけど。
男　どういうこと？
女　そのまんまの意味だよ。
男　嫌じゃないけど、なに？
女　自分からは行ってないかな。
男　責任逃れ？
女　ここに責任なんか生まれないでしょ。
男　俺のせい、みたいな感じに言うから。
女　それはそうじゃん。
男　えー、何それ、断れよ。
女　嫌な思いしたくなかったもん。
男　嫌な思い？
女　不機嫌になられる方がめんどくさいなあって。
男　俺が？
女　家まで行った私にも責任あるし、全然、そんなもんでしょ。
男　嫌だったんかい。
女　嫌とかじゃないって。腕相撲しよう。

　　　男と女、腕相撲をする。男、すんなり勝利。

女　相撲しよ！

　　　男と女、相撲を取る。男、すんなり勝利。

女　そういうこと。
男　え、相撲でやるかやらんか決めるの？
女　違うよ。いや、そうかも。
男　絶対、不利だよ。
女　そうなんだよね。
男　もっとフェアなことで決めなよ。
女　例えば？
男　しりとり？
女　時間かかんない？
男　じゃんけん。
女　運ゲーじゃん。
男　や、じゃんけんは運じゃないよ。
女　じゃんけんじゃないんだよね。
男　じゃんけんホイ！

　　　男、突然じゃんけんをはじめる。女、とっさに手を出す。女、負け。

女　卑怯。
男　運じゃないでしょ。
女　やだよ。飲み会帰りにじゃんけんしてるの見るの。
男　結局、行くんだろうなあと思うけどね。
女　そうなんだよね。だからじゃんけんじゃないんだよ。
男　相撲なら帰る？
女　帰れる。
男　確かに、相撲したあといい雰囲気に立て直すの、至難の業かも。
女　余裕でしょ。
男　本気相撲ね。
女　もちろん。
男　敵じゃん。
女　戦いだよ。
男　何、その、基本男は敵スタンス。
女　だって好きじゃないんでしょ。
男　好きなの？
女　全然。
男　どういうこと？
女　好きだけど。
男　うーん？
女　友達じゃん。
男　そう思ってる。
女　その、好き。
男　じゃあ俺も好きなわけだ。
女　だから、同意はなかったということ。
男　恋愛じゃなきゃダメなの？
女　ダメだよ。
男　つらすぎる。
女　だって好きじゃないじゃん。
男　じゃあもうしないから、なかったことにしよ。
　　別に変わんないでしょ。変わってないじゃん、俺ら。
女　そうだね。
男　嫌なら言って、後から言われても怖いし。
女　誰にも言ってないし、言うつもりもないよ。
男　言いたくない？
女　言ったの？
男　いや、言ってない。（嘘）
女　まじか。
男　ごめん。
女　だから嫌なんだよね。
男　嫌なんじゃん！
女　違う、そうじゃなくて。
男　俺ら友達だよね。
女　そう思ってる。
男　難しいのかな。
女　難しくしたんだよ。
男　嫌な時は嫌って言いなよ。
女　腕相撲、勝てないんだよ。
男　関係ない。
女　力で勝てないんだよ。
男　関係、ない。
女　そう言える？
男　言える男だと思いたい。
女　男なんだよ。私が女に見えたように。
男　つきあう？
女　無い。
男　そっか。
女　友達だもん。
男　そうだよね。

おわり