もうあとは家のローンを払うために、馬車馬のように働くだけだよ。 二十歳の私をベッドに転がしたまま、ガラスのテーブルから煙草を拾う。 好きでもない小太りのこの男と結婚した奥さんは可哀そうだ。 まだ30そこそこのくせに脂ぎった頭皮に乗っかった、パーマの髪をクルクルと回す。 もうこいつとは会わないでおこうと思う。 私の価値は20代であることと、肌が白いことと、少し愛嬌があること。 それ以外にこの男は求めていないのだと知っていたし、 上手くやれている気分でいつも煙草をふかしていた。 彼は私と会わなくなっても、二十歳を見つけて煙草をふかす。 それなりの仕事とマイホームに奥さんと2歳になる娘。 結婚して幸せになるってこういうことなんだなと、娘の写真がアイコンのLINEをブロックする。 家庭でもうまくやれているつもりで煙草をふかしながら、 夫婦喧嘩と親子喧嘩を繰り返して、20代の女に結婚を語る人生の、何が幸せなんだろう。 私の価値がなくなるころ、幸せを見つけていたい。 そこそこの仕事の旦那もマイホームも娘もいらないから、 幸せを、ください。
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