2年間の夢は覚めた。 ぎゅっと瞑っていた目を開いて、映る世界は混沌としている。 覚めてみるとそれまでのことはぼんやりとしていて、始まってしまった新しい生活はこの2年間なんてなかったかのように、わたしにあっさりと馴染んだ。 結局ふたりの会話は何も変わらないまま、何も生まないまま目を閉じていた。 あなたに何度も泣かされたわたしはこんなに強くなったけれど、こんな強さをあなた以外に使う日はきっと来ない。 ふたり居たはずの部屋がある場所を、通るたびに身体の真ん中がきゅっと痛む。何かを忘れてしまったようで、心の内側を探るのだけれど、するりとかわされるばかりで掴めない。わたしは何を忘れてしまったのだろう。 もう一度、出会いからやり直させてよ。一番近いコンビニに、少し無理して買ったSUVで迎えに来てくれた、あの日からやり直そう。慣れない素振りで助手席のドアを開けて、少し照れたあの顔を、もう一度教えてよ。わたしは紺色のマフラーをぐるぐると巻いたまま、嬉しそうにしゃべり続けるあなたを好きになる。 何も変わらないあなたと、何も変えられないわたしは、きっと恋をする。 次は上手くやれるなんて、出来もしないわたしの強がりと、離れられないあなたの優しさ。しっかりと目に焼きつけて、せめて今だけは、前を向く。
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