二人暮らし

白濁した中でゆらゆら揺れるふつふつ弾む。
牛すじ肉の頭がてらてら光る。
暗くなったリビングの電気も付けずに、キッチンでふらふらと漂う。
もこもこのスリッパが脱げないように、足の指先に力を入れてすいすいと回る。
もうすぐただいまが聞ける。
おかえり。

朝にはゆで卵。
皮をむいて半日、お水に漬けておくと卵の臭みがとれるらしい。
クリーニングに出していた薄手のコートを受け取りに行こうと昼前に外に出た。
昨日の夜に掛け布団を取り合ったのが噓みたい。
日差しが刺さる。
冷蔵庫の牛すじ肉と、水に浸った卵のことが少し面倒くさい気がした。
まだコタツは裸のまま。

先月、同級生が三人結婚した。
後輩も、一人が好きだったあの子も、もう誰かと暮らしている。
二人で暮らす2DKは、ゆらゆら、ふつふつ、少しづつ、おいしく柔らかく。
本当は1LDKに住みたかったけれど、2DKの扉を開けて、キッチンを覗くあの人が好きになった。
なんだって良かった。
今はなんだって良かったと思える。

暮らし始めた頃、もうすぐお金ができるから、
そしたら二人に十分な大きさの冷蔵庫を買おうと言ってくれたけれど、
今のままでもどうにかやってるよ。
まだ指にない約束の指輪。
古着屋で見つけた300円のスラックス。
すりガラスの窓にカーテンはない。
ご褒美に買う休日のジュース。
毎日のおはよう。
いってきます。
ただいま。
おかえり。

おでん温めるね。

コメント