猛暑

バチンバチンとアスファルトに体を打ち付けながら、セミが突然飛んでいく。

外に出るのは危険な暑さらしい。

町内放送で流れていたのを聞いていたけれど、おばあちゃんはお墓参りをやめられない。
もう、バケツに水を半分も入れると運べなくなっていた。
私が走って取りに行くと、自分で行くのにと言いながら、二、三歩足を動かして笑った。
東京の息子が送ってくれたという、仰々しい風よけのついたライターは、
最後まで火の付け方がわからなかった。
結局、私の持っていたライターでお線香をあげる。

暑い。

道路を挟んで向こう側の駐車場で、ドアを開けたままエンジンをかけてエアコンをつける。
草むしりを諦めきれずにいたおばあちゃんは、雑草を掴んだまま、やっと歩いてくるのが見えた。
大きなトラックが横切って、
おばあちゃんが、
一瞬、

見えなくなった。

通り過ぎたトラックに目もくれず、歩幅の小さくなった足元を見つめて、一歩一歩。
もうエアコンが効き始めた車に乗り込む。
なんだか少し、涙が出た。

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