あたりまえ

私は出来ないことが沢山ある。あれもこれも出来ないが、それが何だというのだろう。私が出来ないことを非難するが、なぜ出来ると思ったのか聞きたい。あなたの普通は私にはわからないし、私の当たり前も知らないくせに。実は羽が生えていて空が飛べるとして、...

そうかもしれない

大好きな人よ死なないで生きてりゃいいことあるなんて私の口からは言えないけれど大好きな人よ死なないで私をここまで生かしておいて無責任だと思うでしょう大好きな人よ死なないで朝も夜も酷く苦しくてもお願いだから辞めないで大好きな人よ死なないで何もか...

コウちゃん

出会わなければよかった。 出会いはいつもあっという間で、簡単に仲良くなってしまう。趣味や血液型の話をするような出会いに私は恵まれない。何を話したかも覚えていないのに、楽しかった気持ちの出会いが意味をつくる。当たり前に続くLINEは私には特別...

愛を探し求めた女が愛をあきらめた話

愛を探し求めた女が愛をあきらめた話。 「愛されたい」 最初に強く感じたのは小学生に上がったすぐの事だった。これまでの安心には母の存在が絶対で、母がいれば怖いものなんてなかった。母の後ろについていれば、なんだって乗り越えられる気がした。 小学...

グッドモーニングさよなら

こんな朝を迎えたかった。早く目が覚めた日はふたりで土手を散歩して、食パンを買って帰る。パンが焼ける間にコーヒーを淹れる。こんがりと甘い小麦の香りと、爽やかな朝に似合うコーヒーの香り。ふたり順番に鏡の前に立って、それぞれの場所に向かう。また、...

どっちもどっち

1.この顔とこの身体とこの性別に産まれた私を幸せと呼べない私が嫌い。手にしたはずの日常は嘘でしたと手を振って簡単に私から遠ざかっていく。まだ会うだけでこんなにも涙が出るほど好きだなんて私が狂っているらしい。どの道を選んだって私が私を好きにな...

家庭円満

「今日、お父さん早いけん、もう帰らなあかん。」 ごめんねと言いながら名残惜しそうに公園を出る加奈を見送って、隣でしゃがみ込む樹里音に目をやった。いつもの二人が取り残された公園は、もう薄暗い。学校終わりに買った炭酸飲料も飲み切ってしまった。し...

黒い虫

電気のチラつきと瞬きが重なる。目の端に映った黒い虫が私に向かって飛んでくる。今日はコンビニのおにぎり一つしか食べていないのに、喉の奥に何かがつかえて気分が悪い。お風呂上がりの緩んだ身体にもまだ緊張が残っている。 いつまでも前に進めない私の背...

2年

2年間の夢は覚めた。 ぎゅっと瞑っていた目を開いて、映る世界は混沌としている。 覚めてみるとそれまでのことはぼんやりとしていて、始まってしまった新しい生活はこの2年間なんてなかったかのように、わたしにあっさりと馴染んだ。 結局ふたりの会話は...

生活に過去

繋いだ手からわたしじゃなくなっていくのが心地いい。 泥のついた手を水で洗い流して 触れる香りが好きだった。 まだ新しいオートロックのアパートと 夜中に食べるカップ麺と 昼すぎまでベッドから起きないことと 絶対にわたしを殺さないのが好き。 無...