詩 先生 舞台袖、向こう側から当たるライトがまぶしい。 レッスンリハーサル、言われたことやってきたことが頭の中を覆いつくす。 何度も聴いた曲、と、息を吸う。 高ぶりを笑顔で押さえて明るい世界へ。 この瞬間、私が生きている証。 思春期に肉付きが良くなっ... 2023.07.07 詩
詩 ちぎれる ピーンと張りつめた糸が見える。 指ではじくと切れそうなほど、細い細いピーンと張りつめた糸。 あの子はいつも笑っていた。 大変なんです困ってるんです。 助けて欲しいときにヘラヘラと笑う癖が、私とよく似ている。 みんなと同じように起きて、朝出か... 2023.07.07 詩
詩 うどん県 あんなに通った道路を、忘れかけていた感情で走る。 片道3時間の、海沿いが続く道。 バイクで毎週、鼻を赤らめて冷たい手足で、鍵を開けてから言う最初の冗談が好きだった。 もうあの家には住んでない。 途中で寄ったうどん屋さんで、ひとり。 寂しくて... 2023.07.07 詩
詩 かもめ 大きな翼を広げて、まだ灯りのついていない街灯からかもめが飛び立つ。 キャップのツバよりも低く、景色をオレンジ色に変える。 歩いて20分以上もかかる大橋。東京と標準語が怖い、この町。 みんなが言っているらしい噂と、従わなければいけない声。 指... 2023.07.07 詩
詩 ドライフラワー 彼女はドライフラワーが好きだった。 おしゃれなものは、スワッグとかいうらしい。 家にはいつも花があって、花びらが散るのをひどく嫌った。 会う時はいつも綺麗だった。 明るめに染めた長い髪は、クルクルと背中までいつもふわりと揺れていた。 おしゃ... 2023.07.07 詩