もう現金で1万円しか手元にない私は、まだ酒店でワインを選んでいる。お金がなくなれば住み込みで働ける場所に行けばいい。子供も夫もいない私は生活をなめている。
鳥の羽がたくさん絡んだ金網を、誰も気にせず通り過ぎていく。急激に冷え込んだ今日は、町中のクリスマスがいつもより華やかに見える。チキンとケーキの予約を促す広告が私を急かした。32歳のクリスマス。
社会人の彼は、なんとなく生活を楽しんでいる。最近はカメラを買って嬉しそうだ。仕事も大変だけどやりがいがあるし、年末年始は家族で集まる。この会社でキャリアを積んで、ほどほどのお金持ちになるのが未来像。
彼と私は交わらない。とても素敵な彼は私とは交わらない。水泳選手になる夢を、いつ諦めたのかも忘れた彼は、私の手もなんとなく温めてくれる。
左腕に2、3センチの小さなムカデが這った。とっさに右手のひらで叩いた。染み込んだムカデは私の左腕に馴染んだ。
前を向いた。
クリスマス32
詩
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